サインで広がる友との交流

                 阪府在住  保護者      

陽成は、小学校1年生の男の子です。少し小さめでしたが、元気に生まれたのに、その後の成長がとても遅かったのです。原因を知りたくて検査に明け暮れていましたが、何度検査を受けても原因がわからず、治療の方法もわからず、不安と困惑の日が続いていました。そんなある日、ことばのない陽成が、何かを一生懸命伝えようとしている仕草を見て、「そうだ、これは陽成のペースなんだから、一つ一つゆっくり進んでいけばいいんだ」と、心に決めたのでした。それからは、原因探しの検査から開放され、気持ちはうそのように楽になり、家族に笑い声が戻ったのです。

 陽成とマカトンとの出会いは、幼稚園の年中の時でした。その頃全くことばの出ない陽成は、幼稚園の先生の名前を自分で作ったサインで呼んだり、以前に増していろいろな身振りを使い出していました。そんな様子を言語の先生に相談したところ、マカトン法の存在を紹介してくださいました。それまでマカトン法について何も知りませんでしたが、陽成のコミュニケーションの方法が広がれば、という思いで通い出しました。時期がぴったりだったのか、陽成のサインはどんどん増えていきました。主人も娘も一緒になってサインを覚え、家族皆がサイン

を使うことが、陽成にとっても、とても嬉しそうでした。幼稚園の先生も、陽成のことをよく理解してくださり、園の中でもサインを使ってくださいました。そんな中で、何よりも嬉しかったのは、周りのお友だちがいつのまにか陽成と話すときにサインを使ってくれていたことでした。先生達が自然に使うことによって、自然に子ども達に広がっていったのだと思います。子どもは子どもの中で伸びるといいますが、全くその通り、いろいろな刺激を受けてぐんと成長したなと感じられる2年間でした。

 あまりに居心地の良い園の生活でしたので、進路については悩みましたが、幼稚園の仲良しの友だちや姉も通う地域の小学校へ行かせることにしました。入学まで、学校がどのように対応してくださるのか不安でしたが、校長先生・担任の先生・養護学級の先生が何度も話し合う機会を作ってくださいました。マカトンサインのこと、トイレや給食、授業のことまで配慮してくださいました。先生達はマカトン法について学ぶために、大阪から京都まで何度も言語の先生のところに訓練を見に行ってくださったり、講習会に足を運んでくださいました。陽成のためのシンボルを使った教材もいろいろ考えてくださっています。

 ある日、担任の先生が、「今日は、マカトンサインを使って、クラス皆で『いぬのおまわりさん』を歌ったら、皆はサインを使って歌っているのに、陽ちゃんは凄く照れてモジモジしていましたよ」と笑って報告してくださいました。その話しを聞いた時は、陽成の嬉しそうな顔が目に浮かんで、私まで嬉しくなりました。

 入学してすぐの頃は、クラスの子ども達から、「どうして陽ちゃんはお話しできないの?」と訊かれましたが、先生方や幼稚園からのお友だちがサインを使うのを見て、皆がサインに興味を持ってくれるようになりました。やがて「陽ちゃんってサインでお話しできるんでしょ!私にも教えて」とか、「ぼく○○っていうサイン覚えたよ」と言ってくれたり、中には「ぼくの名前のサインを作って」とお願いされたり、多くの子どもが上手に陽成に関わってくれるようになりました。陽成の存在を自然に皆が受け入れてくれたのです。それはとても嬉しいことでした。今では、1年生だけでなく、他の学年の先生や子ども達まで「陽ちゃん、陽ちゃん」と声をかけてくれます。

 もともと陽成は人に関わるのが好きで、誰にでもニコニコ愛想の良い子です。皆に声をかけてもらったり、自分の思いを理解してくれる人が沢山そばにいることは、陽成にとって大きな喜びでしょう。陽成にとって、学校は大好きな場所になっています。

 今まで、多くの人との出会いがあり、多くの人の愛情や支援によって支えられてきました。このことは、本当に心から感謝しなければなりません。

これから学年が進むにつれ、課題が出てくることでしょうが、『陽成のペース』で明るく前向きに、家族みんなで暖かく見守っていきたいと思います。

そして、マカトンを通じて、もっともっと大きな輪が広がることを願っています。

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